先週の1月25日、26日に仙台市にある東北税理士会館にて成年後見人等養成講座の研修会がありました。参加者は120名ほどでした。
成年後見制度の制度趣旨と背景をご説明いたします。わが国日本においては、少子高齢化が急速に進展しつつありますが、そのなかでわが国が選択した施策は、国民の自己責任を基礎とする国家社会の確立でした。そして、平成12年4月1日より日本では社会福祉政策を税による直接的な介入から、国民相互の負担による介護保険制度へと制度転換がありました。これに伴い、福祉サービスの提供は、原則的に行政処分としての「措置」から、利用者とサービス提供者との「契約」によることとなりました。このような「契約」を基本とする社会にあっては、国民が等しく契約者としての権利行使を可能とするために、判断能力が不十分な者に対する保護が必要不可欠となってきました。
今まであった禁治産・準禁治産といった旧制度においては、専ら経済取引の安定や家の財産(家産)の保全が求められ、本人の権利や利益保護の観点が希薄でした。しかし、このような社会福祉政策の転換により、本人の残存能力の活用や自己決定権の尊重「自己決定」、そして障害のある者との共生を目指す「生活の継続性」「本来の生活機能の保持」といったいわゆる「ノーマライゼーション」といった新たな理念との調和を基本にし、本人の身上監護及び財産管理の達成を目的とした「成年後見制度」が制定されたものです。
成年後見制度の概要として、以下の三つの個別制度から構成されているといわれております。
(1)法定後見制度
法定後見制度とは、判断能力が不十分な者に対する旧来の禁治産・準禁治産を改正した「後見」、「補佐」と、新設された軽度の判 断能力の低下が見られる人を対象とする「補助」の三つの類型に分けることによって、対象者の範囲を広げ本人の支援を行う制度で す。
(2)任意後見制度
任意後見制度とは、本人の判断能力が健常な段階で、契約によって、判断能力が低下した場合における後見の範囲や後見人をあらか じめ定めておくことができる制度です。
法定後見制度は、既に本人が判断能力を欠いている場合に適用される制度であるのに対し、任意後見制度は、事前的な措置を自らが定 めることを目的とした新しい制度です。いわば自らの将来は自らが事前に決めることを最大限に尊重した制度といえます。
(3)後見登記制度
旧制度では、禁治産・準禁治産宣告の事実は直接戸籍に記載され、プライバシーの侵害及び差別感を生む等の様々な問題が生じてい ました。しかし取引の安全性確保には取引相手方の法律行為能力の確認が求められる一方、個人情報の保護等も十分に確保される必要 があります。後見登記制度はこれらの問題の解決を図るため、制度の利用に関する情報を「登記」することを義務付けるとともに、限 定された者以外はその情報の入手を不可能とする新しい制度です。
財産管理はまさに税理士としての日常の業務であり、税理士としての専門性を遺憾なく発揮できるものと思われますが、法律行為
及び身上監護においては未知の分野であり他士業との連携又はコラボがカギになってくると思われます。